「Red line in the forest」gallery CRADLE,Aomori,2021
Red line in the forest_覚え書き
最初にこの家のことを書いてみようか。最初にこの家に来たのは15年ほど前だろうか。なぜだか青森での作品制作の機会が多いのだけど、その最初の機会となった学生時代、とは言っても30歳くらいではあったが、お金はなく時間はたっぷりあったのでボロボロの原付バイクで滞在制作にやって来たところをなんだかおもしろがってくれて、この家で美味しい料理やお酒を囲んでたくさんの話をした。
それから年に一回とはいかないまでも、度々訪れ、青森の実家のような気分でいる場所でもある。 どうやらギャラリーを始めたようだ、とインターネット上では見かけていたけどイマイチ家のどの部屋が展示場所になってるか掴めないまま、ちょうど札幌での展示搬入の帰りに青森を訪れる機会があり、最初の展覧会が終わったくらいの頃にギャラリーに足を踏み入れた。印象的な大きな窓があり、この窓や外の庭も使ったような展覧会をそのうちやりたいの、とギャラリストが話していた。
たしかこの辺りは、物置のようになっていた部屋で、でももともとは昭和モダンないい雰囲気の素敵な部屋で、たぶん緑っぽいカーペットがあったかな、いや、うろ覚えなので違かったかも。大人数が集まる新年会では、最終的にレーザーディスクのカラオケのあるこの部屋でスナックよろしくな様子で盛り上がる、そんな部屋のあった辺りだ。そんな記憶がぼんやりとしながら、真っ白なギャラリーになったこの場所に入るとなんだか別の世界に迷い込んだような気分で一瞬クラっとした。
たまたま立ち寄った機会のままに、ギャラリストがまだ6月の予定が決まってないんだよねって言葉に、「あ、5月終わりくらいに車で札幌の展示撤収に行くからちょうど青森通りますね。」と、つい反射的に答えてしまった。とりあえずは外の庭や、大きな窓を作品の要素に組み込んだような展示プランを考えようってことだけ決めて帰路に着いた。
とりあえずは、室内から窓から外にかけて一本の棒が突き抜けてるような風景が思い浮かんで、なぜか色は赤で、言葉遊びだけど「赤い棒、綿棒、用心棒」というタイトルに落ち着いて2週間くらいその方向でぼんやり考えたりしていた。突き抜ける赤い棒と、綿棒で作ったオブジェと、用心棒をモチーフにしたライトボックス作品、なかなか悪くないと思ってたけど詰めきれず、記号的な木をモチーフにしたライトボックスを制作してみたかったのもあり、森をタイトルに入れたものにすることにした。 観客の動線をイメージしていたら頻繁に潜ったり、窓を跨いだり、もしくは橋を渡るような、境界線を越えるような行為が重なるかんじになって、あっちとこっちじゃないけど、そもそもこの部屋自体がなんだか別世界のようなイメージもあったりしたから行ったり来たりするような感覚で空間を設計していった。長いこと青森に足を運んでいるのもあり、もう会えなくなってしまった人たちもいて、会いたいなあ、なんて思いながら手を動かしていた。境界や結界のような意味合いが強くなってきて、地図なんかの赤い線のような、棒から線にイメージが変わっていった。
photo by NISHIKAWA Koji