《看板屋なかざき/signmaker NAKAZAKI》武蔵野美術大学/tokyo

「看板屋なかざき」ミクストメディア/サイズ可変/2001年
「signmaker NAKAZAKI」mixedmedia/dimentions variable/2001

 

平成12年度武蔵野美術大学卒業修了制作展に卒業制作として出品した作品であり、自身において初めて看板をモチーフに用いた作品である。正門をくぐり抜けて突き当たる中央広場に、卒業制作にふさわしくなさそうな、ださい、質の低い、不快な手描きの100枚の看板が並ぶ。これらは卒制展に出品している100人の卒業生、修了生が依頼人であり、彼らの作品の宣伝をしている。教室にある別ブースにて、コンセプト、契約書類、ドローイングなどのプレゼンテーション展示を行った。

依頼人より、100円にて看板の作成、設置及び撤去を請け負った。尚、看板に関する所有、著作といった一切の権利は雇用人である看板屋なかざきにある。契約については、本来「依頼人>雇用人」であるべき力関係が逆転された「依頼人<雇用人」という契約条件をもつ契約書を作成した。注文書における「記載必須事項」は必ず記載する、としながらも図案の最終決定権は雇用人にあるという、依頼人にしてみればいささか理不尽な契約である。この契約を基に制作された看板は看板でないもの、つまり「依頼人の意図に沿わないもの、内容を象徴しないもの、ださいもの、観たものが不愉快に感じるもの」であることが許された存在として佇むこととなる。
私たちはこの世に生を受け間もなくすぐ役所に出生届けが出され、その瞬間に国家の一員となり、それと同時に資本主義社会の中に取り込まれる。看板屋なかざきとの契約を交わすことはその看板の中でのみ、これまでの社会との契約から自由になることを意味している。